医療法人社団 誠馨会 千葉メディカルセンター

口腔領域の悪性腫瘍(口腔がん)

口腔領域の悪性腫瘍(口腔がん)

悪性腫瘍は、上皮性の癌腫と非上皮性の肉腫に分けられますが、口腔領域では肉腫はまれです。ほとんどが癌腫で粘膜の上皮から発生する扁平上皮癌で、口腔がんの約90%にあたります。このほか、唾液腺から発生する腺系癌などもみられます。

2019年の国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)による口腔がんの部位別罹患数の報告では、1)舌がんが半数を占めており、次いで2)歯肉がんになりますが、この二つの部位で7割以上を占め、他には3)口底、4)頬粘膜に発生するがんも報告されております。

口腔がんに罹患する人はがん全体の約2%程度ですが、直接、生命に関わることは他のがんとも同じです。幸いにも最悪な状況を免れたとしても、手術により舌やあごの骨を切除してしまったり、顔が変形したりすることがあるため、食事や会話が困難になり、日常生活に大きな支障を残すことになります。

リスクファクターとしては、「喫煙、アルコール、慢性の機械的な刺激(合わない入れ歯、被せ物の不適合など)、食事などの化学的刺激、炎症による口腔粘膜の障害、ウイルス感染、加齢」などが挙げられます。特に喫煙は最大のリスクファクターであると考えられています。

なお、癌になる手前の状態は前癌病変、前癌状態と言われ、2つの名称を統合して「口腔潜在的悪性疾患(OPMDs)」と言いますが、主に発生頻度が高い疾患としては、以下が挙げられます。

白板症(はくばんしょう)

白い病変で50~70歳代、男性に多く、頬粘膜や舌、時には歯肉にみられる白い病変。
特に舌にできたものは悪性化する可能性が高いとされており、口腔潜在的悪性疾患の代表的なものとされています。
頻度は多いですが、悪性化率としては数%から10%台程度です。

紅板症(こうばんしょう)

紅い病変で50~60歳代に多く、舌、歯肉、その他の口腔粘膜に発症します。
悪性化率が高く、40%前後といわれております。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

白や紅い病変で50~60歳代、女性に多く、皮膚や粘膜にできる角化症を伴う難治性の病変です。原因としては金属アレルギーによるものや遺伝的素因、自己免疫疾患、ストレスなどの精神的因子、さらに代謝障害などの関与が考えられていますが、正確な原因は不明です。
悪性化率としては、1%前後です。

慢性カンジダ症

口腔カンジダ症はカンジダ(細菌)によって引き起こされる感染症で、高齢者を中心にかなりの人が経験する病気です。

このような「口腔潜在的悪性疾患」に掲げられる症状や、口腔がんの初期段階と似たような症状を早期に発見するためには、かかりつけ歯科医院を見つけ定期的なチェックを受けることが予防策となります。

千葉市においては2011年より千葉市歯科医師会等が連携して口腔がん検診を住民に提供し、口腔がんの啓発事業を進めてきております。当院、千葉大学病院、東京歯科大学市川総合病院の3病院が中心的役割を担っており、当院はその事業を全面的にバックアップしている施設で、口腔がん検診で指摘された際の精密検査を積極的に受け入れている施設です。それによって、口腔がんの早期発見・早期治療に繋げております。

日本口腔外科学会指導医・専門医:花澤 康雄医師、肥後 盛洋医師

歯科口腔外科、歯科