脊椎内視鏡センター

『脊椎内視鏡センター』開設のご案内

腰椎疾患の外科的治療は、多くの場合、痛みを取り除き、生活の質を改善させる目的で行われます。
しかし、体にメスを入れる治療には不安を抱く方が多いのではないでしょうか。体への負担を減らし、傷が小さく痛みの少ない脊椎の内視鏡治療は急速に進歩しています。

関節の治療で用いられている関節鏡と呼ばれる内視鏡は、胃カメラなどで使用される柔らかい内視鏡とは異なり、金属でできた硬性鏡(硬い内視鏡)を使用し、 還流液で還流しながら水中での内視鏡治療となります。これを応用した脊椎の内視鏡治療は20年程前に開発され、器具や技術の進歩とともに海外では急速に普及しており、国内でも徐々に広まりつつあります。

当科では2012年より全内視鏡下脊椎手術 (FESS)を開始し400例以上の治療実績を有しています。
当センターでは、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の患者さんへの脊椎内視鏡治療 (FESS)を専門に扱います。FESSをご検討されている方はご相談ください。

誠馨会千葉メディカルセンター 整形外科・脊椎外科部長
日本整形外科学会脊椎脊髄病医
脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日整会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医(3種・経皮的内視下脊椎手技)
平山 次郎

FESS(Full-endoscopic Spine Surgery)全内視鏡下脊椎手術とは


FESS(旧名称:PELD/PED 経皮的内視鏡下脊椎手術)は外径6-7㎜の内視鏡を挿入し、関節鏡のように生理食塩水で潅流しながら、細い鉗子やラジオ波バイポーラ、 ドリルなどの器具を用いてヘルニアを取り除く方法で、椎間板ヘルニアの手術の中では、現時点における最小侵襲の手術法と言えます。傷の大きさは7~8㎜程度で、 ヘルニアの出ている場所、大きさなどから、内視鏡を入れる位置を決めます。

(PELD/PEDは椎間板に対しての手術でしたが、器具や技術の進歩により脊柱管狭窄などの治療も可能となってきました。そこで様々な脊椎疾患に対しての内視鏡治療を意味する FESS(Full-Endoscopic Spine Surgery):全内視鏡下脊椎手術という名称が用いられるようになりました。)

FESSのメリット

  • 傷が小さく、筋肉も切らないために術後の痛みが少ない
  • 神経に全く触れずにヘルニアを摘出することができるため、術後神経の癒着が少ない(transforaminal法の場合)
  • 手術翌朝には歩行可能となるため、短期(3~4泊)の入院で治療できる
  • 感染が少ない

FESSの特殊性

  • 海外ではドイツ、韓国を中心に数多く行われていますが、技術の習得に時間がかかるため現状では国内で実施できる施設は少数です。
  • ピンポイント手術のため、従来の切開手術以上に術前の画像評価が大切となります。

FESSを安全に行うため当科で行っている工夫

当科では、MRIとCTの画像データをコンピューター上で合成することで、立体的なCTとMRIの合成画像を作成し、世界に先駆けてこの画像を手術前計画に利用することに成功しました。 これまでに、この方法の有用性を国内外の多くの学会で紹介し、また国内・国際誌にも掲載され高く評価されています。この方法を用いることで、 FESS手術の確実性と安全性が高まると考えられます。
ヘルニアの大きさや出ている位置、神経や骨との位置関係は、患者さんごとに異なりますが、 3次元合成画像を詳細に検討することで、患者さん一人一人に最適なFESS手術が可能となります。
ただし、どんな方法を以ってしても少ない割合ではありますが 手術による合併症(神経損傷、感染、再発など)をゼロにすることはできません。合併症が生じた場合は最善の方法で対処させていただきます。

3D CT/MRI フュージョン画像の例
IL (Interlaminar)アプローチ用TF (Transforaminal)アプローチ用

FESSにはいくつかのアプローチ方法があります

  • TF (Transforaminal)アプローチ : 経椎間孔アプローチ

    体の斜め後方から、椎間孔という関節の隙間より内視鏡を挿入し、直接ヘルニアを摘出する方法です。FESSのもっとも基本的な方法となります。
    椎間孔はExiting nerveと呼ばれる神経の出口にあたるため、内視鏡を挿入する際にこの神経に触れることによる神経刺激症状が約5%程度の頻度で生じることが報告されています。 通常は数カ月で治ることが多いですが、なるべく避けたい問題です。
    一般的には局所麻酔で患者さんと会話をしながら神経の刺激症状が出ていないかを確認しながら手術が行われますが、 痛みに弱い方や、手術に対して恐怖心が強い方には向いていません。
    当科では術前に3D合成画像を作成し、内視鏡を挿入する椎間孔の広さ、神経との位置関係を確認します。 孔が狭い場合は、内視鏡を見ながら特殊なドリルで広げ(Foraminoplasty)安全に椎間板に入ってゆく方法(Outside-in 法)を行います。 この方法は、神経に触れていないことが内視鏡を見ながら確認できるので、手術中に痛みを感じることのない全身麻酔で行えます。 さらに臨床工学士(CE)と一緒に神経モニタリングを行い、神経の安全性に十分留意しています。

  • IL (Interlaminar)アプローチ : 経椎弓間アプローチ

    通常の切開手術やMED法(国内で多く行われている内視鏡)と同様に、背中の後ろ側の椎弓間と呼ばれる骨と骨の間に内視鏡を挿入しヘルニアを取り除く方法です。 椎弓間が広い方は、骨を削らずに黄色靭帯(椎弓間にある膜のような靭帯)に孔をあるだけでヘルニアを摘出することができます。椎弓間が狭い方は、特殊なドリルで骨を削り、 椎弓間を広げた後にヘルニアを摘出します。脊柱管狭窄を伴った例にも適応することが可能なため、当科で一番多く行われている方法です。

  • Extraforaminal アプローチ : 椎間孔外アプローチ

    外側型のヘルニアで用いられる方法です。
    外側型のヘルニアは椎間孔部という関節で囲まれた部位に出るタイプのヘルニアです。 外側型ヘルニアを摘出するためにはこの関節を切除しなくてはならないケースもあり、その場合、術後に生じる可能性のある関節のぐらつきを防止するため、固定術を同時に行います。 FESSはヘルニア摘出の際に、関節の切除を最小限に抑えることができるので、固定術を避けることができます。

  • 再発ヘルニア

    一度切開手術を行った部位の再手術は神経が瘢痕組織で覆われているため初回の手術より技術難度が高くなります。FESS transforaminalアプローチを用いることで、 初回手術の瘢痕部位を避けてヘルニアを摘出することが可能です。症例によってはinterlaminarアプローチが適している場合もあります。

FESS system を利用した様々なバリエーションの手術も可能となりました

  • 内視鏡下椎弓切除(形成)術

    軽度の脊柱管狭窄症も、内視鏡用の特殊なドリルにより脊柱管を広げることで治療できます。

  • 経椎間孔内視鏡下椎間孔拡大術

    椎間孔部狭窄症は、神経の出口である椎間孔部が狭くなることで神経が圧迫される病態です。脊柱管狭窄の10%程度はこの部位での圧迫が原因です。 FESS systemで治療可能なケースもあります。

椎間板ヘルニアは自然経過で良くなることも多く、基本的には保存療法を行います。痛みがなかなか取れない場合、仕事(スポーツ選手も含め)の関係で早期に痛みを取る必要のある場合 には手術治療を行います。筋肉を切らず、小さな傷と短期入院で治療可能なFESSはこのような患者さんの有力な選択肢になります。また、最近は脊柱管狭窄症の内視鏡手術も可能となってきました。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症でお困りの方、全内視鏡下脊椎手術FESS を希望される方はご相談ください。